2月4日(日)
学習会  

 

 

2024年(令和6年)2月4日(日)山形市総合学習センター3階  10:0012:00 44名参加

 

『朝日連峰の魅力について』    講師 朝日山岳会会長 佐竹伸一氏

講師役職等 

朝日町山岳遭難救助隊隊長、環境省自然公園指導員、朝日連峰鳥原避難小屋管理員、朝日町文化財保護委員ほ

か、NHK  花の百名山出演、著書 写真集朝日連峰の四季(無名舎出版)

 

 

    講演する佐竹氏                          挨拶する大瀧会長

 

  

〈講演要旨〉
朝日連峰は南北に60km、東西に30kmの巨大山塊で、大部分は山形県に属し、一部新潟県になる。
火山ではなく、隆起山塊である。山は立体なので朝日連峰も見る角度によって全く違う山容を見せる。
例えば御影森山、鳥原山、中岳などから見た大朝日岳だけでもこれだけ違う。
最近は温暖化の影響もあって、雪渓と紅葉が同時に見られることも少なくなってきた。
 
◇朝日山岳会について
 山(朝日連峰)を守ることに生きがいを感じて参加している会員で成り立っている特異な山岳会で、シーズン
中はほぼ朝日での活動に集中している。山岳会の会員の多くが山岳遭難救助隊員も務めている。
主な活動としては中ツル尾根コースに架かる6本の吊り橋の踏板の春の設置と秋の撤収。白滝コースの2つの
仮設橋の春秋の設置と撤収。風倒木の除去、登山道崩落の修復。毎年7月の海の日前後には集中して登山道
の下刈り、延べ40名ぐらい泊りがけで大規に実施している。赤線部が活動エリアである。

 

       大朝日岳                                  赤線が活動エリア

 

 

  朝日山岳会の活動の様子  

 

◇朝日連峰の成り立ち
 朝日連峰の地質は主に花崗岩で構成されている。花崗岩は地下の深いところでゆっくりマグマが冷えて固まっ
た岩石(火成岩)。朝日連峰の土台は大陸の端で中世期白亜紀後期(8000万年前、恐竜の時代)にできた。プレ
ート運動により、それが3000万年前ごろ大陸から引きちぎられ日本列島の原型になった。その後の深い海の時
代には朝日の稜線部分が海面だった。当時かろうじて陸地だったのが今の大朝日岳である。約50万年前までは
朝日連峰はまだそんなに高くはなく、岡のような感じだった。その後約50万年前以降に太平洋プレートの
沈み込みによる東西圧縮(造山運動)により、今日の朝日連峰が形成された。
 大朝日岳付近には4つの断層がある。例を挙げれば日暮沢コースの竜門山に至る稜線上の清太岩山、
ユーフン山の間、小朝日岳と大朝日岳の間(熊越)が断層崖であり、2地点を結ぶ線が断層となっている。
(図は山野井徹 山形大学名誉教授 提供)

  

 

 

◇朝日軍道について
1598年1月に上杉藩が会津に移封され、その年の9月に秀吉が死去。徳川軍勢に周りを囲まれる。
しかも庄内が飛び地になるため、最上藩内等を通らず安全に行き来するために道を作らなければならない必然性
があった。私は1599年に朝日軍道が整備されたと考えている。朝日軍道は長井の草岡から朝日連峰の主稜線を
通り以東岳を経て庄内までに及ぶ。現在の登山道付近では次の三か所が確認できる(画像を見ながら)
1.中岳方面から望む西朝日岳の斜面に途中にジグザグの軍道跡が見える。
2.竜門小屋の北側の広い場所
3.狐穴小屋の北、中先峰の付近。
この軍道を昔の装備、道具で荷馬車が通れるほどの道をわずか1年で作る。なんとすごいことだ!
朝日山岳会が数年前から9月に下刈をしている中沢峰~御影森山の登山道。このコースも軍道と重なるルート
だが、20年以上も下刈りがなされていなかった登山道を再び歩けるようにしてほしいと県から依頼されて
作業をした初年は、軍道跡なのか登山道跡なのかがわからず作業に苦労した。
  

 

◇主な登山道紹介
最近は百名山ブームもあり、最短の古寺コースをピストンする方が圧倒的に多いが、年齢を重ねた皆さんには太
古からの朝日連峰の成り立ちや歴史を感じ、雄大な風景、可憐な高山植物などを愛でながら、ゆっくり時間をか
けて登られることをお勧めしたい。

 

◇風景と花の写真
普通の登山者ではなかなか見ることのできない写真家ならではの春夏秋冬の素晴らしい景色、たくさんの高
山植物を紹介していただいた。
              

       写真集1996.1初版発行                        小朝日岳 紅葉        

 

 

 

   朝日連峰を彩る花々たち  ヒメサユリ、ミヤマリンドウ、アカモノ、

       ヒナウスユキソウ、タカネマツムシソウ 他たくさんの高山植物を紹介いただきました。

     

◇主な質疑応答
朝日軍道について。県内高校登山部の現状について。
最近の朝日連峰の遭難事例について、昨年は3件でいずれも高齢者が疲労にもかかわらず、無理をして中ツル
尾根を下山中に遭難した。
山小屋での注意事項について、管理者の指示に従うことや新しい山の情報を教えてもらうと良い。

     

普段では知る機会もない太古の朝日連峰の成り立ち、そして戦国時代に作られた朝日軍道の歴史、さらに素
敵な写真によって山の風景や動植物など朝日連峰の魅力を縦横に丁寧にわかりやすく教えていただきました。
今年は一泊大朝日登山も計画されるようなので事前学習としても大変勉強になりました。本日は貴重なお話を
していただきありがとうございました。
 

 

   

 

 

 ■最近の当会の朝日連峰登山 

 ・2017年(平29年)ブナ峠から鳥原小屋泊で大朝日岳は   こちら

  ・2019年(令和元年)朝日鉱泉からのルートで頭殿山往復は こちら 

    

    

 

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